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本「古楽とは何か」(アーノンクール/著) [お気に入り]


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「古楽とは何か〜言語としての音楽」
(ニコラウス・アーノンクール/著、樋口隆一・許光俊/訳、音楽之友社)。

この夏ごろから、主にTwitter界隈で話題になっていた書籍を読んでみました。
しばらく絶版となっており、図書館を探しまわるツイートが流れておりましたが、
その声が届いたのか、先日めでたく再版となりました。

折しも、そのタイミングでアーノンクール氏の現役引退のニュースが流れてきました。
読むなら今だ!ということで、読んでみました。

全体は、3つの章に分かれており、それぞれ独立していて、どこから読んでもいいです。

◎第1章 音楽と解釈への基本的考察
◎第2章 楽器と言葉
◎第3章 ヨーロッパのバロック音楽とモーツァルト

第1章は そもそもの内容が深遠すぎる上に、翻訳ゆえの日本語の難しさが滲んでいて、
じっくり読む覚悟が必要です。
挫折してしまう可能性もありなので、もし通読するつもりなら最後に読んだ方がいいかも。

逆に、彼の考えのエッセンスを知りたい、実際の演奏の時の諸問題についての見解を知りたい、
ということなら、この章のみを読むという手もあり。
特に冒頭の6ページのみを読むだけでも、この本を手に取る価値があるかと思います。


第2章は ヴァイオリンやガンバなどの弦楽器、バロックオーケストラについてなど。

第3章は イタリア様式とフランス様式などについて、バロック後期の作曲家たち、
モーツァルトなどの作品解説。




この翻訳の底本の出版は、1984年とのことで、約30年前。

第1章で、記譜法、アーティキュレーション、古楽器の是非、音律とピッチ、会場の音響、
そして「演奏と解釈において最も大切なことは何か」について書かれています。
(ネタバレと炎上を回避するために詳細は記載しません)


それらは、30年前には、斬新で奇異な試みであり、
常にクラシック音楽の慣習との戦いであったことがうかがえます。

しかし30年たった今、彼の挑戦は 確実に実を結んでいると言えるでしょう。
何の違和感なく、全く同意であり、もはや当たり前の事のように思えました。

特にファンでもアンチでもなく、CDを一枚も持っていない私でさえ、
知らず知らずのうちに影響され、彼に続く人々から教育されていることに気がつきます。

それでも、彼が「フランス革命以前には 文化の中心だった音楽を 再び回復させる」という時、
それは当然、ヨーロッパ文化圏内を前提としているわけで、
非ヨーロッパ文化圏の私たちは、一体どうすれば・・・とオロオロし、
その道のりの遠さとハードルの高さを前に 途方に暮れてしまいます。


また30年前と言ったら、SONYのWalkmanが発売された頃で、
その後の録音技術とインターネットの発達には めざましいものがあります。

この環境の変化が、音楽のあり方にどう影響しているのか、
影響しているなら、そのベクトルはどちらに向いているのか。
言語としての音楽を得るために、それらは少しは助けになるのだろうか・・・。


そんなことを考えながら、クリスマスを過ごしております。

興味がある方、この冬休みの間に読んでみてはいかがでしょうか。

◎音楽之友社のサイト



◎Amazonのサイト
古楽とは何か―言語としての音楽

古楽とは何か―言語としての音楽

  • 作者: ニコラウス アーノンクール
  • 出版社/メーカー: 音楽之友社
  • 発売日: 1997/06/01
  • メディア: 単行本






音楽は対話である モンテヴェルディ・バッハ・モーツァルトを巡る考察

音楽は対話である モンテヴェルディ・バッハ・モーツァルトを巡る考察

  • 作者: ニコラウス・アーノンクール
  • 出版社/メーカー: アカデミア・ミュージック
  • 発売日: 2006/11/15
  • メディア: 単行本






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