ガット弦の製造過程(17-18世紀イギリス) [愛しのリュート達]
本日は、読書メモです。
図説「最悪」の仕事の歴史(トニー・ロビンソン/著、日暮雅通・林啓恵/訳)原書房
以前から、ルネサンス時代〜バロック時代にリュートや弦がどれくらいの価格だったか、
手紙などを調べて比較して考えているのですが、
ふと「そもそも弦の長さの単位が現代とは違うんじゃないか」と思い当たりました。
過去のブログ記事 【ルネサンス時代のリュートの価格】
つまり、ガリレオが「リュート弦1束」という時、
それは私たちが想像する小分け分包されたものとは、長さが違うのではないかと。
それに、一頭の羊さんから何メートルのガット弦が取れるんだろう?という疑問も。
過去のブログ記事【ガット残酷物語】
過去のブログ記事【草食動物?肉食動物?】
その場面を想像しただけでも、怖いよぉ・・・という感じなのですが、
勇気を振り絞って読んでみました。
イギリス・スチュアート朝時代の「最悪の仕事」として、短いですが、
「ヴァイオリンの弦づくり」の項目があります。
以下、グロ注意ですが、製造過程について簡単に。
・弦づくり職人は、原料として殺したての羊を入手する必要があるため、食肉処理場の近くに住むことが多い。
・ヴァイオリン弦の原料になるのは、羊の下のほうの腸で、長さは30メートルぐらい。
・傷をつけないように細心の注意で、腸をはずす。
・腸の中身を桶にあけて、脂肪質の組織、筋肉、血管を残らず手でこそげ落とし綺麗にする。
(この「愉快な作業(!)」は、家族のうち息子や娘の仕事。>弦づくりは家族一丸となって作業する)
・木材を焼いた灰を溶かした中に浸し、その液を定期的に交換しながら、一週間ほど置く。
これで原料がすっかりきれいに。
・腸の幅が広くて高値がつく部分は、ソーセージの皮にするために回す。
・細い部分は裂いて繊維状にする。
・さまざまな太さに束ねる。
・それぞれの端をフックに取り付け、繰り返し回転させて繊維を撚り合せる。
・弦を乾燥させる。
弦になるのは、ソーセージの皮にする分を取り分けた残りの部分なんですね・・・。
一頭の羊から30メートルの腸が取れるって、本当かしら?
この資料の信ぴょう性、大丈夫?と思って調べたら、本当でした。
(ソーセージ関係の文書を調べた)
すごいな、羊。
ヨーロッパの貨幣価値と物価の面からアプローチする手もあるのですが、
東洋圏についての検討も(個人的な理由で)必要なので、
あえて「羊方面」(=羊肉食文化)からアプローチしています。
とりあえず、今日はここまで。