オールド・バラッドとブロードサイド・バラッド [コンサートのお知らせ]
この夏〜秋のコンサート「シェイクスピア時代のリュート音楽」の
隠しテーマと言っていいのが、このバラッドを巡る作品群です。
スコットランドのバラッド「バーバラ・アレン」
今回は演奏しませんが、好きな曲です。
バラッドは、文学的にも民俗学にも、また音楽的にも
おそらく一生の研究に値する壮大なテーマですので、
ここではごく簡単にまとめておきます。
◉バラッド Ballad とは・・・
語源としては、後期ラテン語で「踊る」を意味する動詞Ballareに由来。
手をつなぎ円になって踊りながら、中心となる人物とその他の踊り手の間で
交互に歌い交わす。
◉オールド・バラッド
四行で一連が形成され、物語性が高い。
作者や成立年代不明で口承によって伝えられる。
中世以前に成立。
2行目、4行目にリフレインを持っていることが多い。(重要!)
このオールド・バラッドは形式を保ちつつ、
歌われる歌詞の内容は最新の事象を織り込みつつ、ずっと歌い継がれていきます。
その一方で、印刷技術が普及した16世紀ごろから、ブロードサイド・バラッドが登場します。
◉ブロードサイド・バラッドとは・・・
ブロードサイドとは、現在の新聞の起源にあたるようなビラのような情報紙で、
識字率が低い人々にそれを買わせるために活用されたのが歌でした。
ニュースをバラッドの詩の体裁に仕立て、人々がよく知っているメロディーにのせて、
歌いながら販売したのです。
このビラ、バラッド・シートには、ニュースの下に「〜のメロディーにのせて」という
指示が掲載されていて、ニュースの内容によってメロディーの種類が決まっていました。
このメロディーのことをブロードサイド・バラッド(バラッド・チューン)と呼びます。
今回のコンサートでは、オールド・バラッドの例として「スカーバラ・フェア」を、
ブロードサイド・バラッドの例として、
「我が敵、運命よ」「ロビン・フッドは緑の森へ去り」「ウィロビー卿のご帰館」などを
取り上げます。
ちなみに、ブロードサイド・バラッドと同じようなものが江戸時代の日本にもありました。
「熈代勝覧」(1805)には「読売り」という、声にだして当時の事件を語りながら
一枚一枚新聞を売っている人の姿が描かれています。
赤い笠をかぶっている二人が読売り、それを囲んで聞いている人々。
【参考CD】これはやっぱり名盤だと思う。バーバラ・アレンも入っています。