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オールド・バラッドとブロードサイド・バラッド [コンサートのお知らせ]


この夏〜秋のコンサート「シェイクスピア時代のリュート音楽」の
隠しテーマと言っていいのが、このバラッドを巡る作品群です。


Forget_Me_Not_Songster_-_Barbara_Allen_p.1.jpg

スコットランドのバラッド「バーバラ・アレン」 
今回は演奏しませんが、好きな曲です。



バラッドは、文学的にも民俗学にも、また音楽的にも
おそらく一生の研究に値する壮大なテーマですので、
ここではごく簡単にまとめておきます。

◉バラッド Ballad とは・・・
語源としては、後期ラテン語で「踊る」を意味する動詞Ballareに由来。
手をつなぎ円になって踊りながら、中心となる人物とその他の踊り手の間で
交互に歌い交わす。


◉オールド・バラッド
四行で一連が形成され、物語性が高い。
作者や成立年代不明で口承によって伝えられる。
中世以前に成立。
2行目、4行目にリフレインを持っていることが多い。(重要!)

このオールド・バラッドは形式を保ちつつ、
歌われる歌詞の内容は最新の事象を織り込みつつ、ずっと歌い継がれていきます。


その一方で、印刷技術が普及した16世紀ごろから、ブロードサイド・バラッドが登場します。


◉ブロードサイド・バラッドとは・・・
ブロードサイドとは、現在の新聞の起源にあたるようなビラのような情報紙で、
識字率が低い人々にそれを買わせるために活用されたのが歌でした。
ニュースをバラッドの詩の体裁に仕立て、人々がよく知っているメロディーにのせて、
歌いながら販売したのです。

このビラ、バラッド・シートには、ニュースの下に「〜のメロディーにのせて」という
指示が掲載されていて、ニュースの内容によってメロディーの種類が決まっていました。

このメロディーのことをブロードサイド・バラッド(バラッド・チューン)と呼びます。





今回のコンサートでは、オールド・バラッドの例として「スカーバラ・フェア」を、
ブロードサイド・バラッドの例として、
「我が敵、運命よ」「ロビン・フッドは緑の森へ去り」「ウィロビー卿のご帰館」などを
取り上げます。




ちなみに、ブロードサイド・バラッドと同じようなものが江戸時代の日本にもありました。
「熈代勝覧」(1805)には「読売り」という、声にだして当時の事件を語りながら
一枚一枚新聞を売っている人の姿が描かれています。

赤い笠をかぶっている二人が読売り、それを囲んで聞いている人々。

yomiuri.jpg



【参考CD】これはやっぱり名盤だと思う。バーバラ・アレンも入っています。








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「道化師タールトンの復活」、復活の意味とは? [コンサートのお知らせ]


前の記事に続き、道化師にちなんだ作品をもう一つ、
J.ダウランド作曲「道化師タールトンの復活」を取り上げてみます。

タールトンがどういう人物だったかについては、前記事をご覧いただくとして、
この宗教音楽ではない曲に「復活」という言葉が使われているのに違和感があるんですよね。

これはどういうニュアンスなんでしょう?


仮定(1)イエス・キリストの復活のように、タールトンが死後、蘇った。

これは、幽霊が住みやすい国、イギリスでもさすがに非現実的だと思うので却下。
キリスト教関係者から怒られそうだし。



仮定(2)タールトンが亡くなった際に、鎮魂、哀悼の意味をこめた。

私はずっとこれだろうと思っていました。
バロック音楽でよくある「トンボー、〜の墓」といった種類の音楽かと。

タールトンが活躍〜亡くなった時期と、作曲家ダウランドがエリザベス女王の宮廷で
御前演奏をしたり、宮廷リュート奏者の地位を狙って就職活動をしていた時期とは
ちょうど重なります。
ダウランドが就職できずにヨーロッパ大陸に移住した年と、タールトンが亡くなった年が同年なので、
やや微妙ではありますが、その訃報に接した可能性はあるでしょう。

ただ上記のような意味で「復活 resurrection」という言葉を使うものなのかどうか、
他の例を見たことがないので、確証は全くなし。



そして今回、シェイクスピア周辺の道化役者を調べていて気がついたのが・・・

仮定(3)タールトンにそっくりな別の人物に会った。


前記事の続きになりますが、タールトンの後、ケンプが約10年間活躍したのちに退団。
その後を継ぎ、まさにシェイクスピアが求める賢い道化師を演じたのが、
ロバート・アーミン Robert Armin なる人物でした。

「十二夜」のフェステ、「お気に召すまま」のタッチストーンなどの役は
彼が演じたと言われています。

アーミンは仕立屋の息子として修行中だったのですが、父親が亡くなった頃、
ふとしたことからタールトンがその文才に目をつけ、スカウトして連れ帰り、
徒弟として 育て上げた人物です。

Robert_Armin.jpg

(仕立屋の息子だからいい服着てるな〜と思ったけれど、これは舞台衣装だった・・・)



ダウランドは、ケンプが活躍した時期はほとんどイギリスを不在にしており、
アーミンが活躍し始めた頃に帰国しています。


そして、タールトン仕込みの、アーミンの演技を見たダウランドは、
かつてのタールトンの面影を見たのではないでしょうか。
「おお、まるでタールトンが復活したようだ!」と。


ダウランドがこの作品をいつ書いたか確証を得ていないので、
妄想と憶測の域を出ないのではありますが、
そう考えると「タールトンの復活」というタイトルが納得できそうです。


仮定(2)で解釈すると、しんみり哀愁を帯びた雰囲気で演奏していたのに、
(3)だとすると、もっと喜びと驚きに満ちた、快活なテンポで演奏をしたくなりますね。



あー、コンサート目前のこのタイミングで、これは大変!(頑張ります)



【動画紹介】

ゆっくりなヴァージョンの演奏。アーチリュートによる演奏で。






クラシックギターによる演奏で、少し早めテンポの演奏。タールトンの絵も出てくるのが可愛い。
最後はしみじみと。






【おすすめCD】
ダウランドのリュートソロのための作品全曲を
代表的なリュート奏者が分担しあって録音した歴史的な全集。
それぞれの演奏スタイルや音色の違いも楽しめるCDです。


ダウランド:リュート曲全集(全92曲)

ダウランド:リュート曲全集(全92曲)

  • アーティスト: ダウランド,ベイルズ(アントニー),リンドベルイ(ヤコブ),ウィルソン(クリストファー),ノース(ナイジェル),ルーリー(アントニー)
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
  • 発売日: 2007/12/05
  • メディア: CD










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道化師ケンプの悲哀と野望、その顛末〜「ケンプのジグ」裏話 [コンサートのお知らせ]


シェイクスピア劇において道化は重要な役どころですが、
リュート曲の中に道化の名前を冠した作品が二曲あります。

「道化師ケンプのジグ」(作者不詳)と「道化師タールトンの復活」(ダウランド作曲)です。

この二人の道化師とシェイクスピア、さらにダウランドとの接点、
そしてこれら芸術の総監督とも言えるエリザベス一世について、
簡単に整理しつつ、この二曲の曲目解説を試みてみましょう。

          ***

シェイクスピア、女王陛下の一座と出会う

1583年、エリザベス一世は民衆の劇団からメンバーを選抜し、
自らの名前を冠した一座を結成、民衆演劇の直接の庇護者となります。

それまで宮廷道化師を雇うのが慣習であったのに対して、
女王と民衆が同じ劇団俳優、同じ娯楽を楽しんだということが、
他の国や他の時代には見られぬ大きな特色であったと言えましょう。

この女王陛下一座は1587年ごろには全国各地を巡業しますが、
その巡業先の一つにシェイクスピアの生地、ストラトフォード=アポン=エイヴォンがありました。



タールトンの妙技、一人楽隊

この時、劇団の中心的な喜劇役者はリチャード・タールトン Richard Tarlton。
劇団結成当時からのメンバーで、ドタバタ喜劇役者として大評判をとり、女王のお気に入り。
さらに、この巡業にはもう一人、入団したばかりの若いウィリアム・ケンプが参加しています。

この巡業公演を 23歳のシェイクスピアが観た可能性があり、
これが彼が劇作に関わるきっかけになったのではないかと言われています。


太鼓と笛による一人楽隊の妙技を披露しているタールトン。

Richard_Tarleton.jpg

タールトンはこの翌年、肝臓病で亡くなります。

その後を継ぎ、シェイクスピアの初期の作品で喜劇俳優を務めたのが、
ウィリアム・ケンプ William Kempe でした。

タールトンについては次回の記事でも触れますが、
ここからはウィリアム・ケンプに焦点をあてていきます。



リストラされたケンプの悲哀

ケンプもまた、アドリブを連発しながら跳ね躍る伝統的なスタイルの道化役者でしたが、
やがて、シェイクスピアは「言葉による表現」を重視するようになり、
新しい道化役を求めるようになります。
すなわち、学識に裏打ちされた機智、人の心を読み取る眼、哀愁を感じさせる雰囲気、
歌唱力を備えた道化です。

このシェイクスピアの要求に応えられなかったケンプは1599年退団を余儀なくされ、
グローブ座の株を売却して(!)去っていきます。


Will_Kempe.png

相棒が太鼓と笛を担当。ケンプの得意技は モーリスダンス morris dance



「ケンプは脛に小鈴をつけて踊りながら、ロンドンからノリッジまで約9日間を練り歩いたという。」

「ケンプのジグ」の解説としてよく語られてきたエピソードですが、
これを現実的に考えてみたいと思います。

ロンドンからノリッジまでの距離は、約100マイル=160キロ、
東京から静岡の距離に相当します。(思ったより近かった・・・)

160キロを9日間で移動するとなると、1日あたり約18キロ、
単純計算で成人男性が歩く速度は平均4.5キロ/hとして、
1日のうち、4時間歩いていることになります。

江戸時代に旅をする人は、1日のうち8-10時間は歩いていたので、
それと比較するとそれほどハードなことではない、
つまり、ケンプの目的は「ノリッジまで移動すること」ではなかったと言えます。

ではケンプの目的は何だったのでしょうか?



ジグに賭けたケンプの野望

実は、ケンプは、この踊りながら移動する道中でお金を稼ぎ、
その後はその旅行記をまとめた本を書くことでお金持ちになることを計画していたのです。

「自分を必要としない劇団なんかやめてやる!
 独立してストリートダンサーになるんだ!
 そしてノンフィクッションを執筆して大儲けするんだー!」といったところでしょうか。

株を売却とか、起業とか、書籍執筆とか、道化師の話とは思えない展開ですが、
その心中を察するに、むしろ富への野望というより、
男の一分を立てるために、ロンドンからノリッジまで踊り歩いたとも言えるでしょう。

その結果は果たして・・・。



現実は厳しく、道中の踊りに多くの投げ銭はもらえなかったようです。
しかし、本は執筆し、1600年に出版され、現存しています。
その名も「ケンプ奇跡の9日間」!(いいタイトルだ。)

・・・これがベストセラーになったという話はありません。


また別の記録によると、
「アルプスを越えてローマまで踊りながら旅をしたが、
ヘイ・ホウ!の掛け声で躍るスタイルはヨーロッパでは受けず、興行的に失敗」したらしい。

最終的には、イギリスに戻って別の劇団に所属し、1603年に死亡。


何だか、いまどきの無謀な起業家の話みたいで、切なくなりますね。




軽快なリズムと親しみやすいメロディーの「道化師ケンプのジグ」。
技術的にも平易なので、初心者向けの教材としてもよく用いられますが、
その裏にはケンプさんのリストラされた悔しさと、野望が隠されていたというわけです。



作者不詳「道化師ケンプ」についてはここまで。
次は、ダウランドの「道化師タールトンの復活」に続きます。



参考書籍はこちら。視点が面白い。読みやすい本でした。

シェイクスピアの民衆世界

シェイクスピアの民衆世界

  • 作者: 青山 誠子
  • 出版社/メーカー: 研究社出版
  • 発売日: 1991/03
  • メディア: ハードカバー







映画「恋におちたシェイクスピア」に「これがジグかな?」と思うシーンが出てきます。
気づきましたか?


恋におちたシェイクスピア [DVD]

恋におちたシェイクスピア [DVD]

  • 出版社/メーカー: ジェネオン・ユニバーサル
  • メディア: DVD



何回観ても面白いですよね。このエリザベス一世のシリーズ。

エリザベス [DVD]

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  • 出版社/メーカー: ジェネオン・ユニバーサル
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エリザベス:ゴールデン・エイジ [DVD]

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  • 出版社/メーカー: ジェネオン・ユニバーサル
  • メディア: DVD




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グリーンスリーヴズ再考〜娼婦に振られた男の歌というのは本当か? [コンサートのお知らせ]


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(リュートを弾くエリザベス一世)



イギリス・ルネサンス音楽、特にシェイクスピア関連のコンサートでは定番中の定番、
「グリーンスリーヴズ」について改めて考えてみたいと思います。

「緑の袖の愛しい人」と訳されることが多いこの作品、私はずっとモヤモヤしているんです。
「緑の袖」って具体的に何を意味しているのか、どうもよくわからない。


まずは、この作品について、よくある解説をまとめてみましょう。

【ルーツ】
スコットランドとイングランドの境界あたり。
16世紀、エリザベス一世の時代に遡ることができる。
シェイクスピアの「ウィンザーの陽気な女房たち」に曲名が出てくる。
他の資料などからも、17世紀の半ばにはイギリス人の多くが知っている流行曲だったことが明らか。

【音楽的特徴】
ロマネスカという定型バス(コード進行)に基づく。
有節形式。
歌曲の他、リュートソロ版、リコーダーと通奏低音の版などがある。
その後もこの旋律は様々なスタイルで編曲され続け、現代では「イギリス民謡」と認識されている。
イエス誕生の歌詞に差し替えたものもあり、クリスマスの讃美歌としても有名。

【歌詞の内容】
思いを寄せる女性に振られてしまった男の失恋の歌。
(歌の歌詞と日本語訳については後述。)



さて、ここからが問題。

◉この女性はどんな人物なのか。

1)緑の色が情欲を示唆するゆえに、性的に乱れた女性、あるいは娼婦という説。
2)ドレスは最初白かったが、草の上でのウフフ・・・なことにより緑に染まった説。
3)緑の服を着て若い男女が集う五月祭で出会った説。

などがありますが、いずれも「緑」に注目して派生した解釈と言えるでしょう。


では本当に「緑色」が性的な情欲を示す、あるいは
「緑色の服装」が娼婦という身分を表すものであったか、
服飾における色彩学のデータを見てみました。

(20ページにルネサンス服飾についての言及があります)


これによると、ルネサンス時代の衣装で多い色は、明るい赤と金色で、
暗めの紫と「緑色」がそれに続きます。
(ちなみに皆無だったのは黄色と青色。黄は罪人、青はマリア様の色なので、これは納得)

絵画での貴婦人の肖像画でも緑のドレスの女性は描かれている。

medici.jpg



以上から「緑色が性的に乱れた女性を示す」というのは、あまり当てはまらなさそう。




そもそもの疑問として、通常、女性を賛美する歌の場合、
女性の瞳の美しさや、髪の色や、ため息をつく口元がどうのこうの、という様々な描写がされます。
それなのに、この歌は、女性の服装しかも「袖」をピンポイントで言及しているのは何故なのか?

◉そこで「袖」の部分に注目してみることにしました。

再び、服飾史を紐解いてみると・・・

HelenaSnakeborg.jpg

・中世以降、男女の間で愛情を示すものとして「袖を交換する」風習がある。

・イギリス、ヘンリー八世〜エリザベス一世時代、袖の部分はアームカバー状の独立した部分で、
身頃とは別になっていた。着用する際は、その都度、細紐やリボン、ピンなどで留めた。
(肩の部分が膨らんでいたり、ケープ状の上着を羽織っているのは、継ぎ目を隠すため。)

・ルネサンス時代のファッションで一番装飾に力を入れたのが袖部分であり、
豪華な刺繍や宝飾品を縫い付けたものであったため、しばしば「贈答品」となった。
(ヘンリー八世の衣装目録や、エリザベス一世の贈答品目録に「替え袖」の項目あり)


当時は、「袖」に特別な意味があり、袖は簡単に取り外しができたということがわかります。


スカートやズボンの一部とかだったら、ちょっと困るかもしれませんが、
袖は引きちぎって渡してもそれほど困りませんしね。
卒業式に 男子生徒から学生服の第二ボタンをもらう、みたいな話でしょう。



このグリーンスリーヴズの歌の彼女は、愛情を示して男性に袖を贈ったものの、
何かの事情で(家同士の政治的な結婚とか)別れざるを得なくなった、
あるいは、よくある単純な心変わりをしてしまった・・・という状況なのではないかしら。


そのように考えると、
女性から贈られた「緑色の片袖」を手に握りしめつつ嘆いている男性
という情景が浮かんできます。

すると「緑の袖の愛しい人」の意味がすっきり!


今までの解釈だと、
「高嶺の花の娼婦に、人生も土地も貢いだ挙句、振られてしまい愚痴っている男性」と
「金をさんざん巻き上げた挙句、もっといいカモが現れたのでそっちにあっさり乗り換えたしたたかな女性」
(すごい悪意にみちた解釈・・・)という、とんでもない歌だったのが、
感動的な純愛物語・・とまでいかなくとも、普遍的な失恋の歌ぐらいには
イメージアップしたのではないでしょうか。




ここで「グリーンスリーヴズの絵画作品は無いんだろうか」と探したところ、これが。

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ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ作「My Lady Greensleeves」

ほらー、やっぱりこの女性はアームカバー状の袖部分を外して、持っているではありませんか!
男性に渡そうとしている場面なのでしょう。





最後にグリーンスリーヴズの歌詞を3番まで記載しておきます。
この3連が歌われることが多いですが、全体はもっと長く、また様々なヴァージョンがあります。

Greensleeves

1
Alas, my love, you do me wrong,    ああ愛する人、ひどいじゃないか、
To cast me off discourteously.     つれなく見捨てるなんて。
For I have  loved you so long,          ずっとずっと好きだったのに、
Delighting in your company.     そばに居てくれるのが喜びで。

*
Greensleeves was all my joy      グリーンスリーヴスこそわが喜びのすべて。
Greensleeves was my delight,         グリーンスリーヴスこそわが歓喜。
Greensleeves was my heart of gold, グリーンスリーヴスこそわが黄金の心。
And who but my lady greensleeves. ほかに誰がいよう、わが愛しのグリーンスリーヴス。

2
I have been ready at your hand    ずっと尽くしていたろう、かたわらで、
To grant whatever thou would crave;  望むものは何でもあげようと。
I have both waged life and land    生活も土地も注ぎ込んだ、
Your love and good-will for to have.  あなたの愛と好意を勝ち取りたくて。

(* を繰り返し)

3
Well I will pray to God on high,       では天の神に祈るとしよう、
That thou my constancy mayst see,    この一途な気落ち、あなたがわかってくれるよう。
For I am still lover true,          今なおわたしは真の恋人なのだから、
Come once again and love me.     どうか戻ってきて愛しておくれ。

(* を繰り返し)

CD「やすらぎの歌」(ソプラノ:名倉亜矢子、リュート:金子浩)の解説より転載。
訳:那須輝彦


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


1)通常、「グリーンスリーヴス」と表記されることが多いですが、
今回の記事では、発音に近い「グリーンスリーヴ」表記を採用しました。


2)替え袖をピンで留める話については、以前ガット弦の製造方法についての記事で紹介した本、
『図説「最悪」の仕事の歴史』でも詳しく取り上げられています。


図説「最悪」の仕事の歴史

図説「最悪」の仕事の歴史

  • 作者: トニー・ロビンソン
  • 出版社/メーカー: 原書房
  • 発売日: 2007/09/21
  • メディア: 単行本












グリーンスリーブス〜エターナル・リコーダー〜

グリーンスリーブス〜エターナル・リコーダー〜

  • アーティスト: 山岡重治,太田光子,浅井愛,高橋明日香,福岡恵,山縣万里,J.S. バッハ,ヴィヴァルディ,モーツァルト,サンマルティーニ,デュパール,クロフト,カー
  • 出版社/メーカー: マイスター・ミュージック
  • 発売日: 2016/04/25
  • メディア: CD





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涙のパヴァーン@シェイクスピアライブラリー版 [コンサートのお知らせ]


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ルネサンス音楽の名曲の一つ、ダウランド作曲「涙のパヴァーン」。
リュートソロ、歌とリュート、コンソートなど、違う編成による作品が残されています。

リュートソロのための作品にも、いくつかの版があり、
テーマは同じでも変奏部分がちょっと違っていたり、
Dのバスが出てくるかどうか(何コースのリュートのために書かれたか)の違いがあります。


今回のコンサートは「シェイクスピア時代のリュート音楽」という趣旨ですので、
Folger Shakespeare Library が所有している版のタブラチュアを使用することにしました。
(上記の写真が、その楽譜です)

このweb図書館は、シェイクスピアを中心とした文学と演劇に関する出版本や写本、
当時の裁判記録や遺言書、レシピなど、生活の様子を垣間見ることができる資料などを
多数所有しています。

サイトトップも没後400年記念ということで、華やかになっておりますので、
ぜひ、ご覧ください。


こうして改めて写本を見ると、普通にそのまま読める綺麗な状態で、
右手運指の指示が細かく書き込まれていますね。



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オルフェウスが21世紀に獲得した能力 [コンサートのお知らせ]



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オルフェウスを題材とした美術作品について書きましたが、(参考記事:オルフェウスと可愛い動物たち
音楽作品について言及しないわけにはいかないでしょう。

そのテーマとなる物語は「冥界下りの物語」。
亡くなった妻を追い求めて冥界に下ったオルフェウスは、
得意の竪琴で猛獣や神々を魅了し、妻を連れ戻すことに成功する。
ただしその条件は「後ろを振り向かないこと」。
途中で不安にかられたオルフェウスはついに振り向いてしまい、
妻は 冥界に逆戻り。とうとうオルフェウスは妻を失ってしまう。

という筋書きです。


バロック時代からオペラの題材として多くの作品が書かれ、
オルフェウス(オルフェオ)、または妻のエウリュディケ(エウリディーチェ)の名前が
タイトルとしてつけられています。

古楽関係ではモンテヴェルディの「オルフェオ」が有名ですが、
他になにがあるんだろうと、ざっと一覧を見てみました。




世紀ごとに作品の数をかぞえてみると、以下のとおりに。

17世紀 20作品 (ヤコポ・ペーリ作曲の「エウリディーチェ」が最初)
18世紀 28作品

19世紀   7作品
20世紀  13作品

21世紀   3作品


聴いてみたい作品を一つ挙げるならば、1647年、ルイジ・ロッシの作品かな。
フランスで行われた最初のオペラの一つで、彼が作曲中に、彼自身の妻が亡くなったのだそう。


バロック時代が多いだろうなとは予想していたのですが、20世紀が意外と多いですね。

親しい人が亡くなれば、再び会いたい、あるいは取り戻したいと思うのは人間の情として
普遍的なものであり、このギリシャ神話はいつの時代にも観客にアピールするものなのでしょうね。
ドラマティックな筋書きなので、舞台演出にも幅広い可能性があるでしょうし。


                 ***


そして、21世紀。
オペラも作曲され続けるとは思いますが、
それとは別に、オルフェウスは楽器を弾くだけではない、特別な能力を持つようになりました!

「自動作曲システム」です。
東大で開発され、日本語で歌詞を入力すると、
自動で作曲、伴奏つきで歌ってくれるというシステムだそう。


演奏サンプルが多数アップされています。

いやはや、びっくり。


シェイクスピアが描く「リュートを奏でるオルフェウス」から、
ずいぶんと遠くまで来てしまったような気がして、
ああ、これが400年の時間の経過なのか、
そんな時代にリュートを弾いている私たちって何なんだろう・・・?と、しばし呆然。

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満席のお知らせ@札幌公演 [コンサートのお知らせ]


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「夏の夜の夢〜シェイクスピア時代のリュート音楽」コンサート、
7月22日(金)カフェエスキスさん@札幌での公演は、
お蔭で満席となりました。

どうもありがとうございます!

引き続き、キャンセル待ちのお申し込みを受け付けております。




また同プログラムでの7月23日(土)@小樽文学館での公演は、若干、お席がございます。

詳細については、ブログ記事 および 公式サイトのコンサート情報コーナーをご覧ください。




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9-11月のコンサート情報 [コンサートのお知らせ]


スクリーンショット 2016-06-19 9.45.25.png

2016年9月〜11月のコンサート情報公式サイトに掲載しました。

まだチラシが完成していないので、日時と場所、概要のみですが、
ご覧くださいませ。

サイトトップの画像も少し変更しました。


どうぞご覧くださいませ。



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「夏の夜の夢〜シェイクスピア時代のリュート音楽」によせて [コンサートのお知らせ]

 

 

port-whitebrouse-mono-copy.jpg

 

北海道でのリュートソロコンサート「夏の夜の夢〜シェイクスピア時代のリュート音楽」によせて、

チラシ裏面に記載している文章を掲載しておきます。

 

                *****

 

リュートという楽器の存在を知ったのが13歳のとき。

その10年後にリュートを手にして以来、息をするようにリュートを弾く生活を続けてきました。

16世紀の人々の暮らしや街の風景について想いを巡らせながらも、

あまりに遠い距離と時間に途方に暮れることもしばしば。

その一方で「人の生活の基盤にあるものは、どの時代もたいして変わらないのではないか」という気もしています。

 


さて、今年はシェイクスピアの没後400年の記念年にあたります。

彼が活躍した時代はリュートが盛んだった頃とピッタリと重なり、作品にもリュートが登場します。

彼の作品が今なお世界中で愛されているのは、そこに普遍的な何かがあるからなのでしょう。


 

今夜のプログラムはシェイクスピアの頃のイギリス音楽でまとめてみました。

これらは優れた作品であり、また親しみやすい魅力に溢れているがゆえに

(シェイクスピアの記念年であろうとなかろうと)私が長年愛奏してきたものです。

 

今回はルネサンスという時代への、そしてリュート音楽という世界へのガイド役を

シェイクスピアにお願いしてみるのも一興かと思った次第。

とりもなおさず、リュートという楽器の魅力の一つは、

シェイクスピアの次の言葉によって端的に言い表されているのですから。

 

《オルフェウスがリュートを奏でると・・

 それを聴いたものは皆、海の高波さえも波頭を鎮めて凪いでしまう。

 その甘美な音楽に、心配事や深い悲しみは眠りにつき、

 やがて安らぎのうちに消えていく。》(『ヘンリー八世』)


 


                  *****

 

プログラム詳細について、文末の「ヘンリー八世」中の詩については、また追って別記事にて書きます。

 

 

 


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リュートコンサート「夏の夜の夢」@札幌・小樽 [コンサートのお知らせ]


札幌小樽チラシ表.jpg

ルネサンスリュート(8コース)によるソロコンサートのお知らせです。

同じプログラム内容で、北海道3カ所で公演が予定されていますが、
まずは、札幌と小樽公演についてご案内いたします。
お近くの方のご来場を心よりお待ちしております。


詳細は、以下の通りです。

 
夏の夜の夢〜シェイクスピア時代のリュート音楽

A Midsummer Night’s Dream ~Lute Music of Shakespeare’s Time

 

《札幌公演》

7月22日(金)開演19:00(開場18:30)

CAFE ESQUISSE

〒064-0821 札幌市中央区北1条西23丁目1-1メゾンドブーケ円山1F

 

2500円(前売・当日共/1ドリンク付/19席限定)

ご予約・お問合せ/TEL  011-615-2334

ご予約・お問合せは、店頭またはお電話にて前日までにお願い致します。(水曜日は定休日の為予約不可)

ファックス・メールでのご予約はお断りさせて頂きます。

 

アクセス/ご来店の際は公共交通機関をご利用願います

・地下鉄東西線「円山公園」駅 下車(5番出口より徒歩7分) 

・札幌駅前バスターミナル1番のりばより中央バスまたはJRバス乗車、「円山第一鳥居前」停 下車(徒歩7分)


主催/CAFE ESQUISSE (カフェ エスキス) 



《小樽公演》


7月23日(土)開演18:30(開場18:00)

小樽文学館 2F   〒047-0031 小樽市色内1丁目9番5号


2500円(前売・当日共/全席自/30席限定)

ご予約・お問合せ/TEL  0134-23-1309 

         E-mail  atelierpiano@gmail.com(片桐仏壇店)

ご予約は会場でも承ります   TEL/FAX 0134-32-2388(小樽文学館)


主催/小樽文学舎

アクセス/JR小樽駅から徒歩10分 駐車場あり


 


 


*両公演協力/片桐仏壇店アトリエピアノ




《予定プログラム》


作者不詳「グリーンスリーヴス」「サリーガーデン」「道化師ケンプのジグ」


J.ダウランド「涙のパヴァーン」「道化師タールトンの復活」「わが敵、運命よ」「ファンシー」


A.ホルボーン「妖精の円舞曲」「夜警」「パヴァーン&ガリヤード」


T.ロビンソン「女王のジグ」「陽気な憂鬱」ほか


 

札幌小樽チラシ裏.jpg



どちらの公演もサロン形式でのコンサートとなっております。
お席に限りがございますので、お早めにご予約をお願いいたします。

コンサート本番までに、プログラム曲や時代背景などについて書き綴っていきますので、
時々、このブログをご覧頂けると嬉しいです。



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