オルフェウスが21世紀に獲得した能力 [コンサートのお知らせ]
オルフェウスを題材とした美術作品について書きましたが、(参考記事:オルフェウスと可愛い動物たち)
音楽作品について言及しないわけにはいかないでしょう。
そのテーマとなる物語は「冥界下りの物語」。
亡くなった妻を追い求めて冥界に下ったオルフェウスは、
得意の竪琴で猛獣や神々を魅了し、妻を連れ戻すことに成功する。
ただしその条件は「後ろを振り向かないこと」。
途中で不安にかられたオルフェウスはついに振り向いてしまい、
妻は 冥界に逆戻り。とうとうオルフェウスは妻を失ってしまう。
という筋書きです。
バロック時代からオペラの題材として多くの作品が書かれ、
オルフェウス(オルフェオ)、または妻のエウリュディケ(エウリディーチェ)の名前が
タイトルとしてつけられています。
古楽関係ではモンテヴェルディの「オルフェオ」が有名ですが、
他になにがあるんだろうと、ざっと一覧を見てみました。
世紀ごとに作品の数をかぞえてみると、以下のとおりに。
17世紀 20作品 (ヤコポ・ペーリ作曲の「エウリディーチェ」が最初)
18世紀 28作品
19世紀 7作品
20世紀 13作品
21世紀 3作品
聴いてみたい作品を一つ挙げるならば、1647年、ルイジ・ロッシの作品かな。
フランスで行われた最初のオペラの一つで、彼が作曲中に、彼自身の妻が亡くなったのだそう。
バロック時代が多いだろうなとは予想していたのですが、20世紀が意外と多いですね。
親しい人が亡くなれば、再び会いたい、あるいは取り戻したいと思うのは人間の情として
普遍的なものであり、このギリシャ神話はいつの時代にも観客にアピールするものなのでしょうね。
ドラマティックな筋書きなので、舞台演出にも幅広い可能性があるでしょうし。
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そして、21世紀。
オペラも作曲され続けるとは思いますが、
それとは別に、オルフェウスは楽器を弾くだけではない、特別な能力を持つようになりました!
「自動作曲システム」です。
東大で開発され、日本語で歌詞を入力すると、
自動で作曲、伴奏つきで歌ってくれるというシステムだそう。
演奏サンプルが多数アップされています。
いやはや、びっくり。
シェイクスピアが描く「リュートを奏でるオルフェウス」から、
ずいぶんと遠くまで来てしまったような気がして、
ああ、これが400年の時間の経過なのか、
そんな時代にリュートを弾いている私たちって何なんだろう・・・?と、しばし呆然。