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シロウテの物語〜太宰治「地球図」 [日々の想い]


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前の記事の続きです。

シドッチというと思い出されるのが、太宰治の作品「地球図」。
青空文庫で読むことができます。太宰治:地球図

短いながらも、シドッチに関して手っ取り早く知るためにも、
太宰作品として読むにも、おすすめ。

いたって真面目な話のはずが、太宰治のユーモラスな語り口にのせられると、
なぜか、おちゃらけた話に思えてくるのが、可笑しい。

着物と刀と丁髷で変装できるはず!と思ったシドッチのおめでたさや、
将軍交代でバタバタしているうちに 捕らえていたシドッチのことを
すっかり忘れてしまった幕府の人々や、
シドッチの言葉が解るだろうかとオロオロしている新井白石の様子やらが
いちいち面白くて、まるでコントのようです。

訊問にあたって 新井白石は通事をかばい「もし通訳を間違っても 責めるなよ」と
奉行の人に事前に念を押したりしています。
なんてチャーミングな人なんだろう、新井白石!

コンパスと地図の話の部分には やや疑問が残りました。
なぜ、ローマを指すのにコンパスが必要なのだろう?
特殊な航海図のような地図なのか、コンパスは方位磁石なのか 円を描くコンパスなのか、
どうもよくわからないな、と思っていたら、
偶然読んでいた「日本政治思想史」(著/渡辺浩)という本にも、新井白石とシドッチの話が出てきて 
同様の指摘がありました。

この本では「日本の高官の尊敬を獲得するための必死の演技であったのであろう。」とあります。
(他に同様の指摘をしている書籍の註もあり)

演技だとしたら、なかなかシドッチもいじらしいものです。


          ***

今回のシドッチの遺骨発見のニュースで私の心を捉えたのは、
むしろ新井白石でした。
いい就職口を同門の友人に譲ったり、
せっかく師匠が新しい就職口のギャラ値上げ交渉をしてくれているのに、
「いいよ、その安い値段で」とあっさり就職したり(それが大当たり)、
なんとも魅力的な人柄。


新井白石が埋葬されたお寺(高徳寺)が、近所だと知って行ってみました。
それが冒頭の写真。

現在は「荒居山」という名前で、隣に「新井白石記念ホール」があり、
葬儀や法事に利用されている様子でした。

近代的な真っ白い建物に、新緑が鮮やか。




日本政治思想史―十七~十九世紀

日本政治思想史―十七~十九世紀

  • 作者: 渡辺 浩
  • 出版社/メーカー: 東京大学出版会
  • 発売日: 2010/03
  • メディア: 単行本

地球図

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  • 出版社/メーカー:
  • 発売日: 2012/09/27
  • メディア: Kindle版









西洋紀聞 (岩波文庫 黄 212-3)

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