空中に漂い続ける歌【長崎ぶらぶら節】 [お気に入り]
今更ながらではありますが、「長崎ぶらぶら節」(なかにし礼/文藝春秋)を
読みました。
長崎学の基礎を築いた古賀十二郎(1879-1954)が、芸者の愛八と共に、
忘れ去られつつある数々の歌を収集して回る話です。
一言で言うと、明治時代のフィールドワーク。
邦楽の「長崎ぶらぶら節」に焦点を絞ってありますが、
隠れキリシタンや唐人さんの歌を集める場面もあります。
古賀十二郎先生、故郷の図書館では随分とお世話になりましたが、
こんなにハチャメチャな方とは知らなんだ。
「歌の不思議たい。歌は英語でエアー、フランス語でエール、
イタリア語でアリア、ドイツ語でアーリア、ポルトガル語でアリア。
つまり空気のことたい。歌は目に見えない精霊のごたるもんたい。
大気をさ迷うていた長崎ぶらぶら節が今、うったちの胸の中に飛び込んできた。
これをこんど うったちが吐きだせば、また誰かの胸の中に入り込む。
その誰かが吐きだせば、また誰かの胸に忍びこむ。
そうやって歌は永遠に空中に漂いつづける。
これが歌の不思議でなくてなんであろう。」
長崎弁、通じますかね?
こんな古い長崎弁は 今ではもう耳にする機会は少ないかも。
耳で確認したくて、DVDを借りてみました。
懐かしい気持ちでいっぱいになりました。
もう亡くなった祖母より前の世代の人しか、こんな長崎弁は話せないのでは。
歌のフィールドワークどうのこうの以前に、
もうこの台詞そのものが記録されるべき音楽に聞こえました。
レンタルしたDVD2回見て、結局、購入してしまいました。
保存版。
吉永小百合さんが唄う「長崎ぶらぶら節」や美しい着物姿など、
聴きどころ、見どころ満載です。
軍艦「土佐」を見送るための「土俵入り」シーンが感動ものです。
Youtubeに予告編があります。
歌とは、音楽とは何だろう、それらを伝えていくことにどんな意味があるのだろう。
そんな大きな問いを投げかけてくれる映画でした。
おすすめ。
【DVD情報】
【書籍情報】
壁画アート@中野駅 [お気に入り]
中央線沿いにある図書館に出かけたのですが、
線路沿いのガードレールの塀が とても素敵な感じになっています。
フクロウと樹木はもちろん、壁のレンガ模様や窓枠も描いてあるのですよ!
多分、本当はただのグレーなコンクリートの壁のはず。
こんな色鮮やかなオウムもいたりして、ちょっと南国気分も味わえる。
鳥が大好きな私は もう、もう大興奮。なんて可愛いんだろう。
こんな調子で、結構、長い距離続いています。
こういう線路沿いの小道は、暗くて物騒な雰囲気になりがちですが、
こんな工夫はとてもいいですね。
淀橋教会 [お気に入り]
バロックギター。
宗教法人ウェスレアン・ホーリネス教団 淀橋教会の中庭。
表通りは 多国籍の人々が行き交う賑やかな場所ですが、
ここは静謐な空気に満たされています。
内部の小原記念チャペルには
「からし種一粒ほどの信仰」
「神にはなんでもできない事はない」の言葉。
雑誌「DIME」付録のスマホレンズで遊んでみた [お気に入り]
三叉路のビル [お気に入り]
散歩の途中で出会った、面白い建築物。
三叉路に建っているこんなノコギリの歯みたいなマンション。
中の部屋はどんな風になっているんだろう。案外おしゃれ空間なんではないかと思う。
こちらも三叉路。
私のカメラがやや斜めになっているだけで、建物が傾いているわけではありません。
昭和な雰囲気が漂っていて、好きな三叉路です。
右方面に行きたいから、と右の道を選ぶと、
なぜが想像したよりずっと遠回りになるというトリックがあって、
通るたびにその謎を解明しようと挑戦するも、
毎回、首を傾げつつ遠回りをしてしまいます。
なんだかステンレスっぽい印象のビル。天気良すぎで、眩しい。
ふと目をやると小さなビルに見えてしまう、
洗って乾燥しているところの、空気清浄機フィルター。
コップのフチの太陽の塔 [お気に入り]
去年の春、北海道に旅行に出かけた家族からのお土産。
コップのフチ子と岡本太郎「太陽の塔」コラボヴァージョン。
だいぶ前に写真を撮っていたのですが、出しそびれていました。
見ているうちに、小動物のように感じられてきます。
後ろ姿も 可愛らしい。
コップのフチから降りて、テーブルの上に立つこともできる!
カメラが「顔認証」しようかどうか迷った挙句に、ピントボケてる・・・。
高度成長期の象徴として(私は大阪万博には行ってないけど)子供の時を
懐かしく思い出す方も多いでしょう。
その太陽の塔もこんなにミニサイズになると、随分と印象が変わります。
小さきものは、無条件に可愛い。
今「太陽の塔」のモデルは岡本太朗が飼ってたカラス、ということを知って、
ちょっとびっくり。
愛用のジャムスプーン [お気に入り]
愛用のジャムスプーンです。
知人から頂いたもので、毎朝食卓で使っています。
小回りが利いて手になじみ、何よりその木の肌あいがすべすべしていて、
手触りが最高です。
硬い木を薄く加工してあり、デザインもシンプルで洗練されており、
飽きがきません。
オノオレカンバ=斧折樺という素材だそうですが、
この名前がいかに硬い木なのかをよく示していますね。
樺(カバ)をカンバと、弾むように呼ぶところが可愛らしい。
古楽関係者は、ガンバの一種かと錯覚してしまいそうですが。
製作したプラム工芸のサイト。
他の商品もいろいろあって、見ているだけでうっとり。
オノオレカンバについての情報ページも読んでみたものの、
リュートは作れないのかしら、と思ってしまう私。
色鮮やかであれば小さくても [日々の想い]
まだ寒さが残るものの、春の気配を感じる頃となりました。
昨日はちょっと身体が凝っていたので、気合を入れてウォーキングに。
散歩道で見つけた可愛いもの。ちっちゃーい花です。
小さいけど色が鮮やかで、変わり映えしない散歩道に 文字通り花を添えてくれますね。
桜の開花ももうすぐ。
【補足】リュートカレンダー3月の絵〜プロメーテウスの神話〜 [愛しのリュート達]
リュートカレンダーの3月の絵について、補足記事です。
カラヴァッジョ派の画家、テオドール・ロンバウツの作品のうち、
最も『カラヴァッジョっぽい』作品はこれではないかと思います。
リュートと関係ないので、前記事では言及しませんでしたが。
「Prometheus」プロメーテウス
ギリシャ神話「プロメーテウス」を主題とした作品で、
生きながらにしてハゲタカに肝臓を突っつかれるという責め苦を負わされているシーン。
ドラマティックな構図、強い光に照らされて浮かび上がる白い肌、
暗い背景とのコントラスト、苦痛にゆがんだ表情、生々しい皮膚感など、
風俗画よりも よりバロックらしい特徴が見られます。
ふと思いついて、この男性(モデル)の顔の部分を切り取り、
上下逆さまにしてみると。
どこかで見たような。
並べてみると。
眉の濃さとか、おでこのシワなどが、似てる。
リュートを調弦するのは、ハゲタカにお腹を突っつかれるほど
大変なことではありませんがね。
ギリシャ神話のプロメーテウスのあらすじを是非ご一読いただければと思います。
自然の脅威、人間と神との関わり、科学技術についてなど
思索を深めるヒントが見つかるかもしれません。
カラヴァッジョ展@国立西洋美術館 [日々の想い]
先日の暖かい日に「カラヴァッジョ展」に出かけました。
サブタイトルが「ルネサンスを超えた男。」上手いですね。
平日の昼間でしたので、さほど混みあわず、快適に鑑賞できました。
全51点の作品と6点の史料の展示、それに周辺の画家についての情報をまとめた地図、
年表のパネルなど、ちょうどよいヴォリュームでした。
史料というのは、主に裁判の記録の古文書です。
その内容がまた面白いというか、人柄を表しているというか、一つの見どころでした。
最近、美術展に行くたび、音声ガイドをレンタルするのが楽しみなのですが、
今回も良かったです。
北村一輝さんの声と共に、古楽が流れてきて、作品脇にある解説も読んでくれます。
絵と自分(と北村一輝さんの)世界に入り込めて、周囲の雑踏も気にならず。
カラヴァッジョの作品ではありませんが、
リュートやテオルボを描いた作品もありましたよ。
リュートって描くの難しいんだな、と思いました(察してください)。
密かなお目当ては、ジェンティレスキ父娘だったのですが、
ジェンティレスキ娘(リュートカレンダー1月の画家です)が、
本展示の目玉である「法悦のマグダラのマリア」の隣に作品を並べていて、
なかなかの健闘ぶりを見せていました。
父の方は、カラヴァッジョとつるんで事件を起こしたりしているわりに、
作品は可愛らしくて、何だか憎めない感じ。
全体にとても明快な展示方法、充実した内容で大満足でした。
しかしながら、個々の作品の印象を すべてなぎ倒してしまったのが、
「アーティチョークの皿、投げつけ事件」のエピソード。
詳細はどうぞ展示会場でご覧下さい。
ちなみにアーティチョークとはこれ。前菜などで出てくる野菜です。
【カラヴァッジョ展】は6月12日(日)まで。
リュートカレンダー3月の絵 [愛しのリュート達]
お雛祭りも過ぎ、少しづつ春の訪れを感じる頃となりました。
それでは、リュートカレンダー3月の絵、
Theodoor Rombouts テオドール・ロンバウツ作〝The Lute Player”(リュート奏者)を
紹介していきましょう。
◎テオドール・ロンバウツは、カラヴァッジョ派の風俗画家で、
1597年フランドル(現在のオランダ〜フランス〜ベルギーあたり)のアントワープ生まれ。
1616年から25年までローマに滞在したのち、1625年に帰郷。27年に結婚。
その頃、故郷フランドルでは カラヴァッジョ派が大いに持てはやされていたため、
ローマ帰りのテオドールは 大成功! アントワープのギルド(職人組合)の親方となります。
その後、ルーベンスをリーダーとした長期にわたるプロジェクトに参加したのち、
1637年に 40歳で死去。晩年は、カラヴァッジョとルーベンスと、
どっちにしようか・・・と迷っているような(?!)作風となります。
◎今回の「リュート奏者」という作品は、1620年ローマ滞在の頃の作品。
カラヴァッジョのリュート奏者を描いた作品(カレンダーの9月を参照)や、
それに連なるカラヴァッジョ派の画家マンフレディのリュート奏者の肖像画(同、11月を参照)に
触発されて描かれたと考えられます。
カラヴァッジョとその流派の特徴としては、
光と影の強いコントラスト、生々しいまでの写実、ドラマティックな構図などが挙げられますが、
この作品においては、白く光が反射した両手、リュートや小物の描写にその特徴がよく表れています。
テーブルの上にあるのは、蓋付きの素焼きのジョッキとパイプ。
最初、スタバのタンブラー?と思ったのですが、考えてみたらこれが原型ですよね。
パイプでの喫煙という習慣もこの頃から始まります。
左にある紐のようなものは 火種でしょうか。
ビール飲んだりタバコ吸ったりしながら、これからのんびりリュートの練習ですか、と
思っていたら、ところがどっこい、絵描きの考えることは全然違った!
「弦が張ってある楽器は〝節制〟を象徴し、それを調弦するのに苦心している様子であれば、
愛と折り合いをつけることに もがいていることを示す。
この絵のように、蓋付きのジョッキやパイプが一緒に描かれている場合は、
より〝自制〟ということを強調している。」のだそうです。(ホントですか、これは)
眉間のシワは「あー全然、音あわないな、面倒くさいぜ。」かと思いきや、
そんな恋の悩みを抱えていらっしゃったとは。
リュートに注目してみると、これは紛れもなく10コースのルネサンスリュート。
写実的だから、分かりやすい。この時代の典型的なリュートと言えるでしょう。
表面板のスレて色が青くなったところも、古びた感じがよく出ています。
面白いのは、弦の張り方です。
このブリッジのところ、弦の端がぐじゃぐじゃなんですけど。↑
ペグボックスの方も、余った部分が派手にはみ出しております。↓
左指の爪が短く切り揃えられていて、リュート弾きとしてのリアリティはありますね。
◎リュートが登場する他の作品を見てみましょう。
「カードゲーム」(製作年/1620年代)
このリュートは、先のリュートと同じものと思われます。
カードゲーム(トランプ遊び)をする人物像は、カラヴァッジョも好んで描いたテーマです。
「バッカスと音楽の仲間たち」(製作年/1630年代)
仲良く腕を絡ませている中央の男女は、テオドール自身と妻をモデルにしていると言われています。
左端のリュート奏者は調弦をしているものの、その表情には余裕が見られるので
愛の葛藤はなく、結婚という愛の調和を象徴しているとか。
こちらのリュートは8コースのルネサンスリュート。拡大してみましょう。
フレットが斜めになっていたり、1フレットの間隔が狭かったり、
これは音程をどうこうしようという意図があるのか、雑なだけなのか、うーん。
次にテオルボを描いた作品を。
「五感の寓意」(製作年不詳)
左から、視覚(眼鏡)、聴覚(リュートの一種、テオルボ)、触覚(石膏像を撫でている)、
味覚(ワイングラスにお酒)、嗅覚(タバコとニンニク)を示しています。
リュートの裏側の膨らみを描くのは難しい。けど、描きたい。
そこで、この画家は二つに分けて描くという知恵を使っています。
テオルボ奏者の足元にもう一本、別のテオルボが後ろ向きに転がっています。
視覚を担当しているおじいさんが鏡を持っていて、その中にテオルボの表側が写っています。
最後にアーチリュートとバロックギターが登場する作品を。
「コンサート」(製作年/1620年頃)
これは、いかにもカラヴァッジョ的な光の使い方ですね。
2種の撥弦楽器の他に、トラヴェルソ、ヴァイオリンなどの器楽と、
そして中央の女性は歌手でしょうか、合奏を楽しんでいる風景のようです。
アーチリュートは机の上に置いて、奏者は中腰になって弾いているようにも見えます。
【今月のおすすめCD】
今回は、ちょうど時代が同じなので、私のCDをご紹介させていただきますね。
「ふらんすの恋歌」(ソプラノ:原雅巳/リュート:永田斉子)
1620年頃のフランスとオランダの作品より。
詳細情報とご注文は、こちらのサイトショップからどうぞ。
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