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リュートカレンダー2月の絵 [愛しのリュート達]


Bartolomeo Passarotti.jpg

リュート・カレンダー2月の絵のご紹介です。

今月の一枚は、Bartolomeo Passarotti(1529-1592)作の
Portrait of a man playing a lute「リュートを弾く男性の肖像」。

右上の文字から、1576年の製作ということがわかりますが、
描かれている人物が誰かは、不明。

テーブルを前にして、リュートを構えている絵が多い中、
この作品は、テーブルを背にして、寛いだ様子でもたれかかっているポーズをとっている点が
珍しいと言えるでしょう。

テーブルの上の二つ折りにした紙は、表に文字列、内側に五線譜の楽譜が描かれていますが、
何が書かれているかは(拡大しても)判読不明です。

全体に、落ち着いた暗めのトーンの中、まず目をひくのが真っ白なレースの襟飾りですね。

amanplayinglute.bp.jpg

この時代の男性のお洒落アイテムでもあり、現代社会でのネクタイみたいなものでしょう。
立体的な造形と、細やかなレースの地模様まで書き込まれています。


作者、バルトロメオ・パサロッティについては、あまり情報がありません。
北イタリアのボローニャに生まれ、一時期ローマなどにも在住するものの、
生涯のほとんどをボローニャで過ごし、教会の宗教画、貴族の(男性が多い)肖像画などを残しています。


どんな人なのか、自画像はこちら。1560年頃(31歳)。

404px-Bartolomeo_Passarotti_Selfportrait.jpg

(生真面目、あるいは繊細で内向的な性格なのかしら。)


やがて、美術学校(大規模なアトリエのようなもの)を設立。
解剖学について講義している自画像。1580年代(51歳)。
Passerotti_Self-portrait.jpg

このようなペンによるデッサンが数多く残されています。
最初の肖像画より、中年になって温和な雰囲気になっていますね。


では、カレンダーに掲載した絵の中で、リュートがどんな風に描かれているか見てみましょう。

私が、一番、気になるところはこの部分。

pegbox..jpg

このペグ、どういう角度で差し込んであるんでしょう?
これでは、弦は巻けませんわ。

遠近法がどうのこうの、というより、
ここまで変だとむしろ狙っているのかと思うほど、シュールです(苦笑)。

気を取り直して・・・と。

かまぼこ型ネック、6コースのルネサンスリュート、
通常シングルに張る1コース(最高音の弦)も複弦に張っている、
フレットも、ダブルに巻いてあることがわかります。

弦が ナットにのっかっている所に光が当たってきれい。
同コース内の2本の弦は こういう間隔で張っていたんですね。

うーん、ここまで細かく描けるんだったら、ペグはどうした!?


ボディのブリッジの部分。
decoration.jpg

ブリッジの端に渦巻きの装飾がされているのがわかります。
私の6コースリュートの同部分も、これと同じデザインになっています。


IMG_3251.JPG


リュートはこちらの群像肖像画にも登場しています。
「モナルディーニ四兄弟の肖像」(製作年不明)

Bartolomeo_Passarotti,_Ritratto_dei_fratelli_Monaldini.png

今度は、リュートのボディの膨らみ部分が、ちょっと変かな・・・。(文句が多い)

リュートって描くの、難しい楽器なんですねえ。

このリュートは 先のリュートとは別のリュートで、
ペグが11本しかないので、1コースもシングルに張っているようです。

Bartolomeo_Passarotti,_Ritratto_dei_fratelli_Monaldini-1.png

同じ地域、時代、タイプのリュートでも、弦の張り方には色々あって、
一概には断定できない、ということがわかります。



さて、このバルトロメオさん、流派としては マニエリスムに分類されていますが、
エルグレコが描く人物のように「手足が長ーい!十等身?」と思うほどの強調はあまり見られません。

むしろ、ちょっと違う方向に そのマニエリスムっぽさが発揮されていきます。


passarotti-caricature-n-1592951-0.jpg

バルトロメオさん、ついに壊れてしまいました〜。

カリカチュア(諷刺画)という分野に、才能発揮! これが16世紀の作品とは(驚)。


この作風でいくと、リュートはどうなるかと言うと・・・
「リュート弾き」(製作年/不明)
Bartolomeo_Passarotti,_Villano_che_suona_il_liuto.jpg


顔の表情に目を奪われて、もはやリュートの細部はどうでもいいレベルです。
リュートとテーブルの隙間から、犬がパンをくわえて逃げようとしているし。


カリカチュアというジャンルは、このバルトロメオの弟子、アンニーバル・カラッチによって
よりエスカレートしていきます。

お仕事として、注文を受けた貴族の肖像画やら教会の壁や天井画などを描く合間に、
気晴らしとして、このようなカリカチュアを描いたらしいのですが、
それにしても、暴走しすぎ。
当時の画家でも、お仕事で絵を描くのはそれなりにストレスが溜まったんでしょうねえ。



Youtubeに 作品のスライドショーがありましたので、ご覧下さい。
この作家が一番、愛着を持って描いたのは「犬」なのかも。






【今回のおすすめCD】

ボローニャつながりで、同地出身のリュートの作曲家、ピッチニーニのアーチリュート&テオルボの作品集を。


ピッチニーニ:リュート作品集(2枚組)/Piccinini: Intavolature di Liuto et di Chitarrone

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  • アーティスト: ピッチニーニ,ルチアーノ・コンティーニ,フランチェスカ・トレッリ(リュート&キタローネ)
  • 出版社/メーカー: Brilliant Classics
  • 発売日: 2007/01/01
  • メディア: CD







マニエリスムつながりで、カルロ・ジェズアルトのマドリガル集(声楽アンサンブル)を。



ジェズアルド:5声のマドリガル集(全曲)

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  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Newton Classics
  • 発売日: 2012/09/19
  • メディア: CD

     

    もう一枚、ジェズアルドのマドリガル集を。こちらは一部試聴ができます。



     

    Quinto Libro Di Madrigali

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    • アーティスト:
    • 出版社/メーカー: Ecm Records
    • 発売日: 2012/05/08
    • メディア: CD

     




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