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小川未明の詩「月琴」 [愛しのリュート達]


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今年は暖冬と言われていましたが、今日、東京は雪になりました。

このところ、月琴について調べなおしておりましたら、
偶然「月琴」と題された小川未明の詩を見つけました。

大正時代の作品。ちょっと悲しい詩です。

この頃、月琴は、中国伝来の雅な楽器としてもてはやされた時代もとうに過ぎ、
日々の糧を求めて門付けをする人々の楽器となっていました。

蛇の皮とは、ピックガードとして表面板に貼られた部分。
私の月琴にも、ニシキヘビの皮が貼ってあります。



「月琴」小川未明

月琴の盤に張り付けられた
蛇の皮を見詰めていた。
鈍い銀色の鱗の目は波形になつて
いた。
雪が頭にも、肩にも、
帯にも白く溜まった。
月琴の絃の上にも、一片、二片落ちた。

蛇の皮の上にもかかつた。
月琴を袂の下に隠すやうにして、
頭を傾げて物貰いは店の前に立っていた。
身動きすると袂が触れて
時ならぬ湿つた微かな音を絃に放つて、
ぷつりと音は止んだ。
雪は止まずに降つた。



詩集:あの山越えて(大正3年/尚栄堂)より

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