リュートが登場する絵本「たくさんのお月さま」 [愛しのリュート達]
リュートが登場する絵本のご紹介です。
以前、朗読音楽会「ロバのおうじ」でご一緒した朗読の方から教えて頂きました。
「たくさんのお月さま」
ジェームズ・サーバー/文
ルイス・スロボドキン/絵
なかがわ ちひろ/訳
徳間書店/出版
1944年に、アメリカの優れた絵本に与えられるコルデコット賞を受賞。
70年にわたり世代をこえて読みつがれている古典的名作です。
1949年に日本語の翻訳版が出版されましたが、戦後まもない時期だったためか判型も小さく、
まもなく絶版に。
作者の生誕100年にあたる1994年、別の出版社と翻訳者によって
改めて出版されました。
「お月さまが、ほしい」という幼い姫の願いをかなえようと、
王様は 大臣、魔法使い、数学者に相談しますが、いい知恵が浮かぶはずはなく、
困り果ててしまいます。
そこに呼ばれた道化師。
「おまえなんぞに、できることはなかろうが、せめてリュートをひいてくれ。
なにか、悲しい曲をな」と、王様に 軽くあしらわれるのですが、
何とこの難題を解決したのは、このリュートを弾く道化師だったのです。
この、【賢者が難題を相談される】→【道化師がリュートを弾く】→【姫に訊いてみる】→【問題解決】
というパターンが 二回繰り返されます。
3人の賢者の長い口上は、それぞれ皮肉が効いていて、
大人はくすっと笑ってしまいそうになるし、
言葉のリズムが良くて、子どもたちは大喜びしそうです。
リュートというより、エレキベース?
ボディは丸いけれど、ネックの先が曲がってないのが、うーん、惜しい。
そして、足が痺れそうなフォームですね。
1944年、まだネット検索も出来ない、本物のリュートを見る機会もなかったであろう時代、
それでも「王様、お姫様」が登場するお話には、リュートを登場させたかった、という
気持ちは伝わってきます。
シンプルなストーリーなのですが、
いつしか大人は この3人の賢者のように、知識や思い込みにがんじがらめになって、
物事を 必要以上に難しく考えすぎている、ということに気づかされます。
どうしたらよいのだろう、と考えあぐねる時は、リュートで悲しい曲を弾いてみることにしましょう。
(厚生省中央児童福祉審議会 平成6年度推薦文化財)